韓国旅行記 ソウル スウォン 2010年3月

 3月19日(金)

 10時過ぎ起床。

 地下鉄1号線に乗り、ソウル駅を越えてイチョン駅からすぐのところに博物館がある。今日はそこで半日過ごした。インカ展というものをやっていて、韓国に来てインカ展もどうかなあと思ったけれど、10000ウォン払ってざっと観てきた。3年前、上野の博物館で観たナスカ展とほぼ同じ内容。常設展は、無料チケットというものをもらって入場する。6世紀ぐらいからの文化遺産が並んでいる。こればかりは言語がわからないと、どの地方の何なのか、ちんぷんかんぷんだ。ただ、大昔はどの民族も同じことをやっていたんだなあということはわかる。縄文式土器や勾玉がないのはあたりまえ(笑)。正直に言って、博物館にある茶碗とか壺とか、資料的な価値は高いのでしょうが、観賞用ではないなあ。仏像は、日本のそれとは違う顔をしている。おおらかというか、馬鹿でかい感じ。大陸だからか。それから文字ですが、現代のハングル文字が出来てくる過程で、アジアのほかの国のいろいろな文字がかかわっていることはわかりました。

 昼食は博物館でキムチうどん。日本の立ち食いうどんの上にキムチと野菜類が乗っているようにみえる。簡単なものでした。メニューどおり5000ウォンだか出したら、小銭がいっぱい戻ってきた。

 韓国は空前のクラシック音楽ブームなんだそうですが、そういう雰囲気には出会わなかった。日本と同じで、音楽学校で楽器を習って、コンクールに出て、欧米式の音楽市場に乗って活動を始めるようです。そういう気配は、音楽学校の界隈に行かないとないのでしょうね。クラシックのCD屋さんも(あるんだろうけれど)商店街では見かけなかった。昨日だったか、日本語で観光案内所にコンサートのことを訊いてみたんですよ。即座に帰ってきたのは、「伝統音楽ですか?」という日本語で、高級ホテルではそういうものを聴かせるショーがあるが、値が張るということ。「現代の音楽」について訊いてみたら、要するにライヴハウスが密集している街は、ぼくがいまいるインサドンから地下鉄でかなり落ちていったところにある。クラシック音楽や、いわゆるコンテンポラリー・ミュージック(現代音楽)については何も言わなかった。

 (クラシック音楽について面白いことがある。地下鉄に乗っていて、乗換えが出来る駅が近づくと、クラシック音楽が流れます。ヴィヴァルディの『ヴァイオリン協奏曲 イ短調』とか、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の第3楽章など。)

 韓国の音楽というと、日本ではサムルノリが有名で、ぼくも芝の増上寺での来日公演を観たことがあるが、こちらに来てみると、サムルノリを知っている人は多くないようだ。すれちがっている。あれは北朝鮮の伝統楽器を使った現代音楽なのだそうです。

 実は夜8時から韓国の伝統音楽のコンサートをやっているので、それを観にいくつもりで出かけたんだけど、いくつかの理由であきらめた。文字が読めないと、特に夜は方角の見当がつかない。地下鉄のシティ・ホール駅のあたりの劇場らしいが、あのへんは道がすごくわかりにくくて、異邦人には所在の見当のつけようがない。観光案内所もない。道がわかりにくいことについて言うと、インサドン界隈から地下鉄5号線のチョンノサンガ駅へ行くにはこちら、という標識はわかりやすいが、裏道に入り、こんな寂れた小路を歩いていて本当に地下鉄に乗れるのか、という印象なのだ。(劇場の所在そのものも不思議なことがあった。インサドンのど真ん中に「ハリウッド劇場」なる建物があるが、この建物の下を車がくぐって通っているんです。ぼくの見間違いかな?)

 この写真の奥の小路を直進すると、数分で地下鉄5号線チョンノサンガ駅に着くんです。よく考えないと構造がわからなかった。

 スウォンの街を歩くのが目的の訪問で、旅程の中にコンサートやライヴの見学を入れていなかった。街をぶらぶらしているだけだが、何しろいろんな新しい感覚、五感が捉える情報が膨大だから、劇場やライヴハウスに行きましょう、という気分ではなかった。あと2日ぐらいいたら、1日丸ごとを劇場見物のために空けておけたと思う。わからない韓国語の洪水や、やたら活気づいている市場、不可思議な小路などを克服して、やっとこさ劇場にたどりつき、せっかく来たんだから見ておかなくちゃ、というようなせわしない気持で大枚をはたいて舞台に接するのは、義理でつきあうようでいやだった。こういうのはタイミングがよくないと楽しめない。

 そういう次第で、うまいもの食べようぜということになった。夕食は、「ヘルシーでバランスのいい食事」と英語で書いてある明るい感じのお店で食べた。牛肉のトッペキ。赤い色のスープで、チゲに似てるけど、入ってるのは牛肉と野菜。これにご飯と、ピンク色の甘酸っぱくて温かい飲み物がついている。グーです。かなり辛いが、辛いものが好きなぼくにはちょうどいい。それに、ピンクの飲み物が絶品でねえ。舌なめずりしました。6000ウォン。香辛料が豊富で、スープは概して薄味で、野菜と肉類を適量摂っていればヘルシーかなあ、と思いました。値段が高くなるほど味がしつこくなるのかな。

 ここで韓国料理の塩分についてネットでちょっと見てみた。インターネット上の意見交換は例によってさっぱり参考にならない。韓国成人の塩分摂取量が、WHOの推奨値の2.7倍にもなると書いてあるのは統計的には事実なのだろうが、薄味スープでも、量が多ければそれだけ塩分も増加すると書いてあったり、逆に塩分が控えめで野菜が豊富だから健康的だと言っていたり、韓国料理は辛いだけでまずくて、あんなものを食うから韓国人は攻撃的だという乱暴な意見まで出ていたりで(もちろんこれは正しくない)、まちまちだ。ぼくは今回の滞在では、1日中韓国料理という気分じゃなくて、焼肉はまあいいやという感じで、朝はパンを食べてコーヒーを飲んでいた。料理のスープはラーメンのスープと同様に考えて、適当に残せばいいんじゃないのかなあ。

 食事に関して気がついたことを言うと、スーパーマーケットはなさそうだ。代わりにあるのがコンビニ。いたるところにあるが、お弁当はあんまり売ってないよ。八百屋はたまにあるけれど、入りづらい。そういうわけで、観光地の真ん中のホテルで生野菜は、ちょっと摂りにくい。

 一体に、日本の隣の国で、同じアジアとは言っても、全然別の国であることに変わりはない。ノン・バーバル・コミュニケーションでかなり補って過ごしました。違いを感じるのは、「笑い」の感覚です。やはりユーモアがコミュニケーションを助けることが多い。しかし、こっちがニコニコしていても、相手が反応してくれない場合は、往々にしてある。別に韓国でなくても、似たことはどこででもあるんだけれど、笑いがあると気分がほぐれる。



3月20日(土)

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