2017年3月14日(火)



 バンコク、午後4時ちょうど。大した用がないので、午前中はランブトリ通り近辺で、まだあんまり行ったことがない路地や市場を散歩しました。というといかにものどかだが、そして、現実に切羽詰まった事情は何もないんだけれど、この暑さ!10日夜にバンコクに到着してから本日まで、素晴らしい晴天で、雨は一切降らず、同じ強度の暑さが続いています。だからときどき、セブンイレブンで売ってる水でもいいし、街頭で売ってるアイスコーヒーでもいいけれど、水分を補給したほうがいいようだ。この暑さも毎日体験してると、なんだか飽きたような気分になってくるけれどね。

 街頭でかわいい女の子が25バーツのアイス・ラテを売っていたので、日陰で涼みながら飲んで、片言タイ語と少しの英語で話しかけてみた。どうもかなりの数のタイ人は英語が話せないらしい。この女の子は「WAKE UP FROM THIS!」と白抜きで書いてある黒い半そでシャツを着ていたから、簡単な英会話ができるかなと思ったが、わからないそうです。タイ語で音楽のことを「ドントリー」というのだそうで、片言タイ語でぼくは日本で音楽やってるよと、話してみたが、よくわからないという顔をしていた。ぼくの印象では、そもそも「音楽」に興味関心があって敏感な人は限られているのではないか。何も芸術音楽のことを言っているのではない。広く、音楽全般について話しているんだけどな。はあ、かわいい女の子でした。

 このカオサン近辺から、たぶん40分ぐらい歩くと、寺院のある広い公園が見えるはずなんだけど、何べんも書くが暑いからタクシーで行ってみようと思った。ところが、どのタクシーも「No.」で、乗車を断られた。なんでかねえ。しばらく考えて、いちばん確からしいのは、単に道を知らない、ということなのではないか。寺院だったら街の至る所にあるんです。建築物の基本的な形はみな同じだが、だからといってひとつ見たらもういいですということもなかろうと思った。でも3回もタクシーの運ちゃんに断られて、行くのめんどくさくなっちゃった。

 明日、水上市場に行くツアーというのに加わって午前中を過ごします。360バーツ。このホテルから1時間ぐらいのところで、船に揺られて過ごすそうです。ぼくは集団の旅行は今までまったくやらなかったが、知らない土地でツアーに参加するのはひとつの手ですね。田舎に行って象に乗る12時間ツアーもあったが、疲れそうなのでやめにした。

 あーそれから、これはメモだけど、旅費を節約するのもほどほどにしたほうがいいです。ホテル代を除いて、1日500バーツもあればふつうに飲食や行楽ができるが、思わぬところで出費がかさむ場合がある。ぼったくり、とまでいかなくても、土地の人のサーヴィスにはいくらかプラスアルファがつくことがしょっちゅうあるので、日本円で数万円かそこらの予備費用を見ておいたほうがいいと思う。そんなことを言わなくても、そもそもお金を持っている日本の旅行者は、最初から高級ホテルに泊まり、行き届いたサーヴィスを受け、1日当たり10000バーツ以上使っているのかもしれない。そういう人がいてもいいけれど、上に書いたのは、決してお金持ちではないぼくの場合ですね。(こんなことを書くと、バンコクの商売屋さんは客からぼったくる人が多いような書き方にみえるかもだけど、違いますよ、タイのご商売の方々の勘定はたいへん正確で、こちらと相互信用ができていれば不当な請求はありません。)

 バンコクに定住する気がないのなら、ホテルやツアーそのほかのサーヴィスは、良心的な土地の人とめぐり合って、案内を頼んで、しかるべくお金を払って、ということをやるのがいいような気がする。最初から文句のないサーヴィスを日本のインターネット経由で確保しておいて、バンコクに来たらヤリタイ放題というのは、なんか違うような気がしますが、いかがでしょうか。

 ところどころに、道しるべをやってくれる男性や女性は現れるもんだというのが、今回、ぼくがバンコク旅行で経験していることなのだが、違いますか。これは迷信でも信心でもなくて、ごく現実的な話で、そういう土地の人の案内がなければ、うかうか食事もできないということになる。身の安全を気にしてセキュリティ対策100パーセントで出かけるのも必要な心構えなんだろうけれど、あまりにぎちぎちの旅行は、果たして面白いだろうか。むしろ日本の都市部の状況のほうがおかしな感じがすると、一昨日、ポーランド人さんやカナダ人さんとホテルのバルコニーで爆笑していたとき、話題に出た。すこしおかしいと、みなさんおっしゃっていました。

 日本の性風俗に飽きた日本人がバンコクに来て、現地のイイ女と寝ることが多いから、バンコクは性風俗の一大都市だとインターネットの情報にあった。ぼくはバンコクは初めてだし、どうやら信用できそうなタクシーの運転手さんが安いお店に案内してくれるとのことで、地下鉄のナナ駅あたりをちょっと覗いて来た。全部見たわけではなく、安いお店にちょっと寄った程度だから、その道の専門の方が笑うでしょう。しかし、セックスに対する考え方やサーヴィスの態度が、日本と根本的に違っているとは考えにくいです。ぼくは日本ではキャバクラにも行ったことがないが、日本の女に飽きたからバンコクの女をあてにするというというのは、ちょっと受けいれにくいなあ。今後も、その道の達人になろうなどというつもりは、ぼくにはない。そもそもぼくにはそういう才能はないですよ。ただ、現地の女性が嫌がるようなことをしなければ、日本より親切なんじゃないか、というあたりが、少し寄ってみた感想です。「金で買えるセックスの楽しみはあるが、金で買える愛はない」って、誰が言ってたんだっけ。ぼくだって木石ではなく、けっこう助平だけど、本式(というものがあるとしてですが)に構える気はなく、お店の女性にも、案内役のタクシーの運転手さんにも、出せる範囲で現金でお礼しましたよ。(くれぐれも節度を守ってスマートにやってね。)

 そうそう、セックスに対する日本の禁欲的な態度は儒教の影響だと、美輪明宏さんが著作に書いていた。バンコクに来てから、日本は何事によらずストイックになりすぎていないか、とずっと思っています。全部開放すればいいじゃないかとは、ぼくは思わない。そんな社会はありはしない。しかし、人間の原始的な感覚を封じ込めて、体面で進行するということが、少し行き過ぎではないだろうか。

 ホテルに戻ってきて近所で夕食、Chang ビールも含めて 200バーツの世界に戻りました。




3月15日(水)

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